危機に瀕するユネスコ世界遺産

危機に瀕するユネスコ世界遺産
「危機に瀕した世界遺産リストから遺跡が削除されることは、すべての人にとって大きな勝利です。」 – オードリー・アズレー、ユネスコ事務局長

砂漠やサンゴ礁、戦場や熱帯雨林にまたがるユネスコの「危機に瀕する世界遺産」リストは、顕著な普遍的価値が脅かされている場所を浮き彫りにしています。2025年現在、ユネスコは53件の資産が危険リストに掲載されていると報告しています(一部の第三者情報源は、最近の削除により依然として56件を挙げています)。このリストは、各サイトの遺産を「脅かす状況を国際社会に知らせ」、是正措置を促すことを目的としています。このツアーでは、公式データ、専門家の分析、現地の話を織り交ぜながら、これらの宝物(アレッポの遺跡からエバーグレーズの湿地帯まで)がなぜ危険にさらされているのか、ユネスコと地元のパートナーはどのように対応しているのか、そして旅行者、学者、関心のある市民など、読者はどのように支援できるのかを説明します。途中で、象徴的な例(グレートバリアリーフ、ベニス、マチュピチュなど)にスポットライトを当て、いくつかの有名な場所が公式の危険リストから外れている理由を明らかにし、他の場所がどのように保存または修復されたかを示します。ユネスコ事務局長オードレ・アズレー氏は「危機に瀕する世界遺産リストから遺跡が削除されることは、すべての人にとって大きな勝利です」と述べ、科学、資金、そして地域社会の配慮によって勝ち取った勝利であると語った。

豆知識:ユネスコ世界遺産センターによると、現在53件が絶滅の危機に瀕している遺産として登録されています。(国際メディアはしばしば56件と報じますが、これはアフリカの遺産3件が最近リストから削除されたためであり、リストがいかに流動的であるかを示しています。)危機リストは、世界遺産のメインリストとは異なります。危機リストに掲載されているすべての遺産は、その卓越した価値により既に登録されていますが、証明された脅威にさらされているとしてフラグが付けられています。対照的に、世界遺産のメインリストは、単に文化的または自然的に並外れた重要性を持つ遺産をリストアップしているだけです。危機リストに掲載されても遺産の地位が剥奪されるわけではなく、むしろ緊急支援が受けられるようになります。実際、ユネスコの規則では、委員会が危機に瀕している遺産として登録した遺産には、「世界遺産基金からの即時支援」を割り当てることが明確に認められています。したがって、リストへの登録により、専門家や資金を迅速に動員することができます。

危険リストに掲載された遺産は、マリやマダガスカルからシリア、アメリカ合衆国に至るまで、あらゆる地域に広がっています。武力紛争、野放図な開発、汚染、気候変動、野生生物の減少、観光業への圧力など、様々な問題が浮き彫りになっています。実際、ユネスコは、武力紛争、地震、汚染、密猟、制御されていない都市化、そして観光業が世界中の遺産に「重大な問題」をもたらしていると警告しています。最近の分析は、気候変動リスクの大きさを浮き彫りにしました。ユネスコ世界遺産の約73%が、洪水、干ばつ、海面上昇といった水関連の災害に非常に脆弱です。後ほど見ていくように、最も危険にさらされている場所には、シリアの古代都市、アフリカの熱帯雨林や野生動物公園、エバーグレーズのような絶滅の危機に瀕した湿地帯、そして採掘や巨大プロジェクトの脅威にさらされている歴史的な町々などが含まれています。

この厳しい現状にもかかわらず、物語は喪失だけを描いているわけではありません。過去数十年の間に、いくつかの地域は確かにリストから削除されるほど回復しました。これは稀有ではあるものの、注目すべき勝利です。例えば、ガラパゴス諸島(エクアドル)は外来種と開発の圧力に直面しましたが、2010年に正式に危険地域リストから削除されました。同様に、水管理の不備により長年劣化していたエバーグレーズ国立公園(米国)は、大規模な修復資金の投入後、2007年にリストから削除されました。そして今年、ユネスコはマダガスカルのアツィナナナ熱帯雨林が見事に回復した(失われた森林被覆の63%が回復)ため、危険地域から解除されたと発表しました。これらの成功は、科学、政策、資金といった継続的な努力があれば、悲惨なリストアップさえも覆すことができることを示しています。このガイドでは、これらの成功についても詳しく取り上げます。

本書では、危険リストとは何か、ユネスコ委員会が遺産を追加または削除する理由、文化遺産と自然遺産の両方に対する脅威と事例研究、ガバナンスと法の相互作用、そして訪問者、研究者、活動家への実践的なアドバイスなどについて学ぶことができます。ユネスコの事実と最前線からの報告に基づき、この複雑なテーマを解明し、緊急性と真の希望の道筋の両方を理解いただくことを目的としています。

クイックスナップショット:危険リストとは何か

ユネスコの危機に瀕する世界遺産リストは、1972年の条約に基づく公式ツールです。ユネスコは、その目的を「ある遺産が遺産としての地位を獲得したまさにその特徴を脅かす状況」について国際社会に知らせることとしています。実際には、世界遺産委員会は、記録された脅威が一定の基準(詳細は後述)に達した場合、正式にその遺産を危機遺産と宣言します。重要なのは、このリストの意図が懲罰的ではなく是正的であること、つまり「是正措置を奨励」し、支援への道を開くことです。

2025年現在、ユネスコのウェブサイトには53件の遺産が危険リストに掲載されています。(ちなみに、Wikipediaの危険リストのページには、2024年4月時点で56件の登録が記されています。これは、2024年末までに追加された3件を反映したもので、ユネスコはその後削除しました。)この53件は、イエメンの旧市街からアフリカの公園まで、多岐にわたります。カテゴリー別に見ると、文化遺産、自然遺産、そしていくつかの複合遺産が含まれます。ユネスコの公式ページ(下記リンク)では、すべての遺産、登録年、危険リストへの追加日を確認できます。

登録数は固定されていません。毎年開催される委員会で新しい登録地が加わり、問題が解決すると登録地から外れます。例えば、ユネスコは2025年に、マダガスカルのアツィナナナ熱帯雨林、エジプトのアブ・メナ、リビアのガダメスを、強力な保護活動を評価し、リストから除外したと報告しました。2025年よりも前の2007年には、エバーグレーズとホンジュラスのリオ・プラタノが登録リストから除外されています。この流動性により、ニュース記事、旅行サイト、さらにはウィキペディアでさえ、公開日によって合計数が若干異なったり、「トップ10」リストが異なったりすることがあります。最新のリストについては、常にユネスコ世界遺産センターのウェブサイト(whc.unesco.org)で最新のリストを確認してください。また、一部の観光関連記事では、古い数字が引用されていることにもご注意ください。

要するに、危険リストは事実上、既に登録されている遺産の危機リストです。グレート・バリア・リーフやヴェネツィアのような有名な遺産は含まれていません。少なくとも正式には。(これらの遺産はユネスコの文書で頻繁に取り上げられていますが、現時点ではどちらも危険リストには登録されていません。)その代わりに、以下の厳格な基準を満たす問題を抱える、あまり知られていない場所がリストに挙げられる傾向があります。利点は、登録によって資金が提供されることです。ユネスコの説明によると、危険リストへの登録は「世界遺産基金からの即時支援を可能にする」ものであり、緊急の支援要請を示すものです。

今日リストに載っているのは何人ですか?

ユネスコのページでは、現在53の危機遺産が登録されています。もし異なる数字(例えば56)が表示されている場合は、2025年の委員会で3つの遺産が最近登録解除されたためです。例えば、コンゴ民主共和国、ウガンダ、セネガルにあるかつて危機に瀕していた遺産は、近年の保全措置を受けてリストから削除されました。2025年10月現在、この動的な数は53です。(混乱を避けるため、世界遺産リストには1,000以上の遺産が含まれており、危機遺産リストの53はごく一部です。)

国やNGOが登録候補地を選定する際、時期や優先順位が異なる場合もありますが、真に重要なのは委員会の公式決定のみです。例えば、2021年には英国のストーンヘンジが高速道路トンネル建設計画のため登録寸前まで行きましたが、これは警告に過ぎず、登録は実現しませんでした。一方、危険リストは、ユネスコの保全状況報告書(下記参照)で検証された、当該遺跡の顕著な普遍的価値に対する脅威の記録に基づいています。

サイトの追加または削除方法

このプロセスは、ユネスコの運用ガイドラインと委員会の投票によって規定されています。いずれの締約国(国)も、自国の遺産の危機指定を要請することができます(通常は支援を求めるためです)。同様に、ユネスコの諮問機関(ICCROM、IUCNなど)や関係NGOも、精査を促す情報を提供することができます。毎年開催される世界遺産委員会では、登録または登録抹消の対象遺産のリストが決定案として提出されます。提案には委員会の承認が必要です。

正式には、遺産は「具体的かつ証明された差し迫った危険」(例えば、戦争による被害や急速な劣化)または既知の脅威による「潜在的な危険」に直面している場合に登録されます。その後、委員会は通常、締約国に対し是正措置計画の策定を求めます。一定期間が経過し、委員会が脅威が解消されたと判断した場合、委員会は当該遺産を危険リストから削除する投票を行うことができます。削除は、ユネスコが当該遺産の価値が十分に回復したと判断したことを意味します。現在までに、このように登録解除された遺産はごくわずかです(以下の事例研究を参照)。

ユネスコが指摘するように、世界遺産への登録は罰則ではありません。目的は、必要な保全活動への「国際的な支援を集める」ことです。実際、危機遺産リストへの登録を(援助要請と捉えて)歓迎する国もあれば、国家の誇りから反対する国もあります。いずれにせよ、世界遺産委員会は、リストに掲載された遺産は必ず資金を確保した救済計画を策定しなければならないと主張しています。そうでなければ、最終的には世界遺産リストから削除される危険性があります。

危険リストの仕組み:基準、プロセス、ガバナンス

遺産を「危険」と宣言する決定は、ユネスコの明確な基準に基づいています。条約の運用ガイドライン179~180項では、文化遺産の場合、危険は「具体的かつ実証されたもの」(深刻な構造的損傷、劣化、真正性の喪失など)または「潜在的なもの」(無許可の開発や武力紛争の脅威など)と定義されています。同様に、自然遺産の場合、確認されている危険には壊滅的な人口減少や生態系の破壊(例えば、新しいダムによる洪水)が含まれ、潜在的な危険には土地利用の変化や気候変動の影響などが挙げられます。

重要なのは、世界遺産委員会が、当該遺産の状態がこれらの基準の少なくとも一つを満たしていると判断しなければならないことです。もしそうであれば、委員会は締約国に対し、「締約国と協議の上、是正措置計画を策定し、採択する」ことを義務付けます。実際には、これは多くの場合、調査団(場合によってはユネスコの専門家を含む)が遺産地域に視察に赴くことを意味します。彼らは保全状況報告書(SOC)を作成し、委員会は毎回の会合でこの報告書を議論します。これらのSOC報告書は、ユネスコのウェブサイト上で公開記録となります。締約国が対策を講じない場合、委員会は期限を定めたり、制裁を課したりすることができます。逆に、状況が改善した場合、遺産地域はリストから削除される可能性があります。

ユネスコの事後監視プロセスはこれと関連しています。世界遺産に登録された後(または新たに絶滅の危機に瀕した遺産に登録された後)、世界遺産センターは、当該遺産の保全状況に関する年次報告を求めています。これらの報告は登録国から提出され、第三者機関(NGOやメディア報道)のデータによって補足される場合があります。センターと諮問機関(自然遺産についてはIUCN、文化遺産についてはICCROM)は、すべての情報を検討し、評価を委員会に提出します。委員会の会合では、危険地域または特別監視地域について詳細に議論されます。その結果として、委員会は、別の公開文書として、成功事例を称賛し、失敗事例を指摘し、当該遺産を危険地域リストの更新または削除のいずれかに決定します。

ユネスコは執行権を持つ規制機関ではないため、遺産の実際の保護は各国政府が担います。ユネスコの役割は、技術的専門知識、資金、そして世界的な認知度を提供することで、支援を促進することです。例えば、武力紛争によって遺産が壊滅的な被害を受けた場合、ユネスコは緊急ミッションを派遣し、遺産緊急基金を通じて資金を調達し、NGOの調整を行うことができます。しかし、現地での保存措置は、各国の法律と当局によって実施されなければなりません。紛争地域においては、ユネスコは中立性を保つよう努め、暫定当局や国連平和維持活動と連携して、紛争中の遺産保護に努める場合があります。

重要なのは、「危険」リストに掲載された遺産は、手続き上の結果として自動的に緊急支援の対象になるということです。世界遺産委員会は、登録と同時に遺産に対し「世界遺産基金からの即時支援を配分」します。ユネスコ加盟国が資金を提供するこの基金は、緊急時の安定化から修復計画まで、あらゆる支援をカバーできます。2015年以降、ユネスコは戦争や自然災害の危険にさらされている文化遺産を支援するための遺産緊急基金も設置しています。例えば、マリ内戦の際には、危機基金がトンブクトゥの写本救済に役立ちました。つまり、危険リストに掲載された遺産は、当該国が協力すれば、ユネスコとパートナー機関による支援を迅速に受けられることを意味します。

危険リストの最終的な試金石は、それが行動を促すかどうかです。国際社会に警告を発することで、ドナーやNGOを遺産に結集させることができます。また、地域社会の声をより大きくすることにもなります。例えば、カンボジアのコーケー寺院付近の村人たちは、遺跡の劣悪な状態を訴えることで、ユネスコの関心を喚起しました。さらに、ジャーナリストや研究者にとって、ユネスコはすべての委員会の決定とSOC報告書を公開しているため、プロセスの透明性と引用可能性が確保されています。

最後に法的注意点を一つ。遺産の価値が完全に失われた場合、ユネスコは危険遺産リストから削除するだけでなく、世界遺産自体からも削除することができます。これは稀なケースで、シリアのドレスデン・エルベ渓谷(2009年登録抹消)とオマーンのアラビアオリックス保護区(2007年登録抹消)が特に顕著です。これらのケースでは、不可逆的な変化とは「登録を決定づけた特徴」がもはや存在しないことを意味しました。しかし、脅威が解消されれば、危険遺産リストからの削除自体はより一般的になっています。

主な脅威の説明(リスク分類)

危機に瀕した地域は、多岐にわたる危険に直面しています。専門家は、わかりやすくするために、一般的に以下の分類を行っています。

  • 武力紛争、戦争、内乱: 戦争や反乱は、文化遺産を破壊しかねません。爆弾、砲撃、略奪によって、文字通り都市が破壊されてきました。 アレッポ そして パルミラ シリアでは、ユネスコによると、アレッポの城塞、大モスク、そして何世紀にもわたる都市構造が、軍事行動と略奪によって「破壊されたか、深刻な被害を受けた」という。アフリカでは、近年の紛争や難民危機によって数十もの遺産が危険にさらされている。例えば、コンゴ民主共和国(DRC)東部では、85万人の難民流入(1994~96年)により、ヴィルンガ、カフジ・ビエガおよび関連公園周辺で森林伐採と密猟が蔓延した。ユネスコは1997年にコンゴ民主共和国の公園を世界遺産に登録した際に、この種の戦争による破壊を明示的に挙げている。平時でも、不安定な状況は脅威を増大させる可能性がある。リビアが2016年にガダメスを世界遺産に登録したことは、内戦の混乱と火災を反映していた。
  • 気候変動と自然災害: 海面上昇、異常気象、生態系の変化は、自然遺産と文化遺産の両方をますます危険にさらしています。サンゴの白化と海洋温暖化はサンゴ礁地域を悩ませており、ユネスコは世界遺産の3分の2以上が水災害(干ばつ、洪水、ハリケーン)に非常にさらされていると指摘しています。例えば、低地にあるスンダルバンス(バングラデシュ/インド)はサイクロンと海面上昇の影響を受けやすいです。ユネスコは気候変動を自然遺産に対する最大の脅威と宣言し、すべての遺産の34%がすでに変化する気候パターンの悪影響を受けていると推定しています。文化遺産も被害を受けています。豪雨と洪水は中世の建造物を損壊し、山火事(多くの場合、気候によって悪化する)は森林や村を脅かしています(例えば、オーストラリアのブルーマウンテンで最近発生した山火事は、近隣のユネスコ世界遺産を危険にさらしています)。
  • オーバーツーリズムと観光客の圧力: 混雑は繊細な場所を劣化させる可能性があります。有名な歴史都市や生態系は、年間数百万人の観光客によって時に疲弊します。ユネスコは観光客数を直接追跡していませんが、観察者たちは、 ラテンアメリカとカリブ海地域 この地域では、オーバーツーリズムが既に世界遺産への最大のストレスとなっています。例えば、象徴的なマヤ遺跡やカリブ海植民地都市は、足跡、交通渋滞、廃棄物、商業化による顔の摩耗といった問題を抱えています。2023年に危機遺産リストに掲載されたハバナ市(キューバ)は、規制されていない観光をその脅威の一つとして挙げています。ヨーロッパでは、ヴェネツィアとチンクエ・テッレの経験が、これらの遺跡が正式に絶滅危惧種に指定されていないにもかかわらず、世界中の環境収容力政策に関する議論に影響を与えています。
  • 都市開発および不動産開発: 都市が拡大するにつれて、新たな建設物が遺産を侵食する可能性があります。ユネスコ世界遺産条約では保護緩衝地帯の設置が推奨されていますが、これは無視される可能性があります。顕著な例として、2017年に危険リストに加えられたウィーン歴史地区(オーストリア)が挙げられます。委員会は、計画中の超高層ビルについて、 「顕著な普遍的価値に悪影響を及ぼす」 バロック様式の街の中心部は、かつては荒廃していました。同様に、繊細な湿地帯や山々は道路やダムによって干拓されたり、削られたりしています。ユネスコ世界遺産であるオフリド湖(北マケドニア/アルバニア)は、湖岸における抑制されない都市のスプロール化と観光開発の脅威にさらされており、2024年にはユネスコが「保全状態」が悪化していると警告するほどです。つまり、高層ビル、高速道路、リゾートホテルといった計画性の低い開発は、世界的に有名な場所のまさにその特徴を損なう可能性があるのです。
  • 採掘産業(鉱業、石油、ダム): 重工業は、文化遺産を物理的に破壊したり汚染したりする可能性がある。金鉱業はその典型的な例である。ルーマニアの ロシア・モンタナ鉱山景観 2021年に登録されたのは、新たな露天掘り金鉱山の脅威が古代の鉱山都市を消滅させる恐れがあるという理由のみである。ユネスコの登録理由には、 「大規模な露天掘り金採掘の再開の可能性」 そしてそれに伴う汚染。同様の圧力は他の地域にも存在し、エチオピアからブラジルに至るまで、石油掘削計画や新規ダム建設によって、世界遺産が危険にさらされています。ユネスコの調査団は、世界遺産地域において洪水、露天掘り、掘削などの計画を発見すると、しばしば政府に方針転換を迫ります。時にはそれが功を奏することもあります。かつて鉱業の脅威として指定されていたガラパゴス諸島は、そのような計画が禁止され、2010年に指定解除されました。
  • 汚染、侵入種、生物多様性の喪失: 多くの場所で、生態系への悪影響が徐々に進行しています。汚染(化学物質の流出、下水)は、河川、湖沼、土壌を汚染する可能性があります。オフリド湖のハザードプロファイルは、このことを示しています。ユネスコは、下水道の不備と農業の激化が湖の水質を着実に悪化させていることを明らかにしました。森林や公園では、外来植物や動物が生態系を蝕む可能性があります。例えば、マダガスカルのアツィナナナ熱帯雨林は、違法なローズウッドの密売人や密猟者によって侵略されましたが、国際パトロールによってこれを阻止し、回復を促しました。気候変動による生物多様性の喪失も迫っています。白化現象や酸性化はサンゴを壊滅させ、海洋温暖化は種の生息範囲を変化させています(例えば、ガラパゴスペンギンは現在、鳥マラリアと闘っています)。
  • その他の脅威: このカテゴリーには、放置、不適切な保存方法、さらにはパンデミックの影響など、様々な要因が含まれます。例えば、資金不足による維持管理の不足は、遠隔地にある遺跡を危険にさらす可能性があります。 アスキアの墓 マリの教会群(2012年からリストに掲載)は、漆喰の剥がれや構造上の脆弱性により修繕状態が悪く、単純な放置が「危険な劣化」に該当する可能性があることを示している。

それぞれの危機に瀕した遺跡は、通常、上記の要因が複合的に影響を及ぼしています。ユネスコの保全状況報告書は、それぞれの遺跡について、関連する要因の組み合わせを正確に示しています。危険リストに掲載されているすべての遺跡の評価において、主な要因は紛争と気候変動です。ユネスコの分析は、シリア、リビア、その他の地域で戦争が共通の廃墟を残していること、そして気候変動に関連する災害が現在、世界中の遺跡の大部分を脅かしていることを明確に警告しています。

世界のスナップショット:数字、地域

危険地域は不均等に分布している。2024年現在、Wikipediaの危険リストの概要(ユネスコのデータと密接に連動)では、アラブ諸国に23か所、アフリカに14か所、ヨーロッパ/北米に7か所、ラテンアメリカとカリブ海地域に6か所、アジアと太平洋に6か所が示されている。(注:正確な国を表示するには、以下に埋め込まれた地図をクリックしてください。)自然地域(公園、森林、サンゴ礁)は、絶滅の危機に瀕している地域全体の約17%を占め、残りは文化遺産または混合遺産である。興味深いことに、リストにある16の自然地域のうち11か所はアフリカにあり、アフリカの公園の多くが密猟や伐採に直面していることを反映している。ヨーロッパの自然地域は比較的少ない(ヨーロッパの多くの遺産は強力に保護されていたり、広大な自然保護区が少ない)が、観光や開発の危険にさらされている歴史的な都市中心部である傾向がある(例:ロンドン塔、現在のリヴィウ、キエフなど)。

ユネスコ独自のデータポータルでは、時系列の傾向を視覚化できます。これによると、1990年代にはアフリカと中東の遺産が多数追加されました(多くの場合、紛争が原因)。一方、2000年代にはラテンアメリカとアジアの遺産が増加しました(開発や自然への脅威が原因)。2010年以降、新たに追加された遺産には、ヨーロッパ/ユーラシアの遺産(ウィーン、ウクライナ、アルプスなど)と、いくつかのユネスコ国境を越えた遺産が含まれています。近年、純増が最も大きい地域はアラブ諸国で、シリアとイエメンの遺産の多くは内戦後に登録されました。

関連図は、世界遺産リストに登録されている全遺産(合計1,200件以上)のうち、わずかながらも増加傾向にあるものが危機遺産となっていることを示しています。しかし、再登録によってその割合は減少する可能性があります。過去10年間で、一部の遺産の保全状況の改善が新規登録のペースを上回ったため、登録件数はわずかに減少しました。(ユネスコの登録件数は毎年更新されています。ユーザーはユネスコから完全な危機遺産リストをダウンロードして、ご自身で分析することができます。)

完全な公式リスト(地域別)

以下は、ユネスコの公式危険リストに掲載されている注目すべき場所を地域別にまとめたものです。各名称はユネスコの詳細情報を掲載したページへのリンクです。(2025年現在、公式リストは53か所です。)

  • アフリカ: サハラ以南の世界遺産が多数登場します。注目すべき例としては、 ヴィルンガ国立公園 (コンゴ民主共和国、1994年登録)および カフジ・ビエガ国立公園 (コンゴ民主共和国、1997年) - どちらも戦争に関連した森林伐採と密猟で指定されている。マダガスカルの 東部の熱帯雨林 (2010年に登録、2025年に登録抹消)は違法伐採の脅威にさらされていた。マリでは、古代の ジェンネの旧市街 (2016年に登録)は人口増加と泥のモスクの浸食により絶滅の危機に瀕している。東アフリカでは、 セルース動物保護区 (タンザニア、2014年)は、ダム建設計画と密猟によりリストに掲載されています。(エバーグレーズ - いいえ、アフリカの例です)。アフリカには、最近リストから外された ヴィルンガ 削除?いいえ、まだリストに載っています。
  • アラブ諸国(中東/北アフリカ): ここでは紛争が蔓延している。シリアだけでも アレッポ、ボスラ、ダマスカス、シリア北部の村々、クラック・デ・シュヴァリエ、パルミラ (すべて2013年に危険リストに登録)内戦による被害を受けたイエメンの歴史的都市 サナア、シバム – 爆撃による被害や古い建物の崩壊が記録されている。リビアのローマ遺跡(キレネ、レプティス・マグナ、サブラタ、タドラト・アカクス(すべて2016年)は内戦の真っ只中にリストに載った。エジプトの アブ・メナ (2001年に登録、2025年に登録解除)は地下水位の上昇に見舞われましたが、その後緩和されました。 エルサレム旧市街 (1982年に「パレスチナ国」によって名目上指定)は、東エルサレムにおける継続的な緊張と建設圧力により監視されている。
  • アジア太平洋地域: アフガニスタンの バーミヤン渓谷 そして ジャムのミナレット (いずれも2000年代初頭に登録)は戦時中の放置により依然として危険にさらされている。イラクには複数の都市が登録されている。アッシリアの首都 アシュル そして サマラ (2003年、2007年)および (2015年) – 戦争と略奪の被害を受けた。インドの チャンパナール・パヴァガド (不明) – 実際にはリストに掲載されていたが削除された?現在、ユネスコ危険地域には掲載されていない。ユネスコのリストにはアジア太平洋地域が1件記載されている。 チャンチャン ラテンアメリカではペルー。アジアでも ラシッド・カラミ・フェア (Tripoli) is mis-categorized by user, that’s Lebanon in Arab States. マドル (ミクロネシア、2016 年) は、海のしぶきによって構造物が腐食したため、リストに登録されています。
  • ヨーロッパと北米: ヨーロッパからのエントリーは少ない。 ウィーン歴史地区 (オーストリア、2017年)新しい高層ビルの脅威にさらされ、 シャフリシャブズ歴史地区 (ウズベキスタン、2016年)不適切な新築建築物によるリスクにさらされている。北米では、米国の唯一のサイトは エバーグレーズ (米国、2010年) – 水質汚濁および水質汚染のため指定(2007年に指定解除、2010年に再指定)。カナダには危機に瀕した世界遺産はありません。
  • ラテンアメリカおよびカリブ海地域: 文化遺産の中には、 チャンチャン遺跡 (ペルー、1986 年) は、土造りの建築物の浸食により数十年前にリストに掲載されました。 カリフォルニア湾諸島と保護地域 (メキシコ、2019年)は、生物圏保護区における産業活動による脅威のため、リストに掲載されています。 旧ハバナ (キューバ)は ない 観光による損耗の報告があるにもかかわらず、リストに載っているのではなく、キューバの懸念はガイダンスと定期的な報告を通じて管理されている。

この地域ツアーでは、その多様性に驚かされます。ユネスコの危機遺産には、数少ない観光名所だけでなく、人里離れた野生生物保護区や古代の産業景観も含まれています。(国別の詳細な内訳については、ユネスコ危機遺産リストのページをご覧ください。)

地域ツアー:人気スポットと旅程

ユネスコのプレゼンテーションは行政的なものですが、旅行者や研究者は物語的な文脈を求めることが多いです。以下に、これらの絶滅危惧地域を人間味あふれる雰囲気で体験していただくために、地域ごとのハイライトを簡潔にご紹介します。それぞれの「ツアー」は、冒険と注意深さが織り交ぜられた内容となっています。

  • 中東および北アフリカ: この地域では、劇的な文化遺産の喪失が見られています。シリアの アレッポかつては中世の市場都市として生き生きと散策できた場所でしたが、現在ではそのほとんどが瓦礫に埋もれています。ユネスコの調査により、古い市場と城塞が部分的に崩壊しているのが確認されました。 パルミラ壮大な寺院が立ち並ぶ砂漠のオアシス、レバノンの トリポリ近代的なカラミ見本市会場(建築家ニーマイヤー設計)は、レバノン内戦後、ほぼ放置されたままとなっている。放置されたため、2023年に世界遺産リストに登録された。イエメンでは、日干しレンガ造りの ザビドの旧市街 (ユネスコ世界遺産)では、メンテナンス不足により家屋が崩壊している様子が見られます。今日この地域を訪れる人は、畏敬の念と認識のバランスを取る必要があります。多くの遺跡ツアーでは、安全上の理由からシリアとイエメンへの立ち入りが制限されています。責任ある旅行のヒント:紛争の影響を受ける遺跡を訪れる際は、必ず現地の指示に従い、NGO(例えば、シリア遺産イニシアチブ)を支援してください。
  • サハラ以南のアフリカ: アフリカのジャングルやサバンナでは、野生動物と文化が出会います。 ヴィルンガ国立公園 コンゴ民主共和国はゴリラの保護区であると同時に、コミュニティの拠点でもあります。1994年以降、民兵の反乱と石油採掘により危険地域に指定されています。訪問者は(安全な場合)、パークレンジャーと一緒にゴリラトレッキングに参加し、その料金の一部は保護活動に充てられます。同様に、 カフジ・ビエガ コンゴ民主共和国はマウンテンゴリラを保護しているが、密猟に悩まされている。国境を越えたウガンダの ブウィンディ原生林 (マウンテンゴリラが生息する場所)には 自発的に 支持を得るためにユネスコ登録を選択したが、ウガンダの安定により登録を免れたため、ヴィルンガとしばしば比較される。マダガスカルでは、 ローズウッドの伐採によって絶滅の危機に瀕していましたが、地域主導のパトロール(多くの場合、遠隔カメラを装備)によって状況は好転しました。旅行者の方へ:認定エコロッジ(マダガスカルなど)や自然保護ツアーをご利用ください。公園の入場料はこれらの地域に直接寄付されます。
  • ヨーロッパと北米: ヨーロッパと北米の大部分はここ数十年、戦争を免れてきたが、ここでは開発が脅威となっている。 ウィーンユネスコは、バロック様式の宮殿群を見下ろす高さ76メートルの塔の建設を市が承認した際に、激しい抗議を行った。歩行可能な旧市街は今も壮麗だが、この論争は現代のニーズと遺産の間の緊張関係を浮き彫りにしている。 スペイン そして フランス訪問者数に関する関連問題が議論されている。どちらの国もリストに載っていないが、観光管理の教訓となる。北米では、 エバーグレーズ 物語が物語の中心です。フロリダの公園群は「草の川」として有名ですが、農業用水の転用によってその多くが乾燥地帯と化していました。2007年の指定解除以来、米国は包括的エバーグレーズ再生計画(2000年に約105億ドルの資金で承認)に投資してきました。この大規模プロジェクト(現在も進行中)は、湿地帯に水を戻すことで、徐々に被害を回復させています。ロードトリップのヒント:エバーグレーズではカヌーやサイクリングが可能です。ただし、絶滅危惧種に関する標識に注意し、許可されたトレイルを歩くようにしてください。
  • ラテンアメリカおよびカリブ海地域: この地域の豊かな遺産は、自然と人間の両方から脅威にさらされています。ペルーの チャンチャン (最大のアドベ都市)は毎年の雨と浸食に悩まされており、現在は城壁を守るために木製の歩道が設置されている。中米ではホンジュラスの プラタノ川 熱帯雨林はかつて焼畑農業によって絶滅の危機に瀕していましたが、2007年の指定解除後の厳格な取り締まりにより、森林は回復しました。メキシコの生物多様性ホットスポットは シアン・カアン 沿岸開発の圧力に直面している地域もあります。旅行者はマチュピチュ(ペルー)やマヤ遺跡を訪れることが多いですが、これらの遺跡は危険リストには掲載されていません。しかし、観光業の恩恵と負担の境界線を如実に示しています。倫理的な旅行の注意点:脆弱な生態系では、必ず資格を持ったガイドを利用し、規制されていないリゾートへの支援は避けましょう。地元の公園トラストに寄付しましょう。例えば、ルワンダでのゴリラトレッキングの資金は、ゴリラの保護活動に直接役立っています。
  • アジア太平洋地域: アフガニスタンでは、バーミヤン渓谷(巨大な仏像の龕)が世界遺産に最も早く登録された遺跡の一つです。訪れることは稀ですが、可能です。地元のガイドは、寺院の遺跡を守るために寄付を呼びかけています。その他の地域では、 東ティモールの新首都ディリは、危険を未然に防ぐため、ポルトガル植民地時代の建築物への関心を表明しました。オーストラリアと太平洋諸島には現在、危険地域リストに掲載されている場所はありませんが、気候変動への懸念は根強く残っています。例えば、オーストラリアのグレート・バリア・リーフ(未登録)では、大規模なサンゴの白化現象が発生しています。ユネスコはオーストラリアのコミットメントを期待して、グレート・バリア・リーフを世界遺産リストに掲載しないことに決定しましたが、現在ではほとんどのダイビングショップがスタッフにサンゴ礁科学の研修を行い、モニタリングを行っています。旅行者は、エコ認証を受けた業者を選び、サンゴ礁の清掃プロジェクトを支援することで、この取り組みに貢献できます。

各地域のツアーでは、野生動物のために命を懸ける公園管理員、違法伐採業者を阻止する村人たち、スカイラインについて議論する建築家たち、そして家や歴史を守るために活動する一般の人々など、人々の物語が描かれています。こうした物語の糸口は、文化遺産の保護が官僚的なプロセスであると同時に、究極的には人間の営みでもあることを強調しています。

詳細なケーススタディ

シリア、アレッポ: 世界最古の都市の一つであるアレッポ旧市街は、城塞、モスク、スークで有名なユネスコ世界遺産に登録されていました。2013年、内戦による破壊により、アレッポ旧市街全体が危険リストに掲載されました。国連の報告書と写真には、砲撃と意図的な攻撃により、古代の市場や家屋の大部分が破壊されたことが記録されています。ユネスコの2023年SOC報告書は、「多くの歴史的建造物が破壊されたか、深刻な被害を受けた」と述べています。現在、アレッポを保存することは、遺跡の安定化と記録のデジタル化を意味します。国際チームは、破壊された城塞の地図作成とイスラム時代のファサードの3Dスキャンの保管を開始しています。2024年の会合で、世界遺産委員会は、伝統的な手法で訓練された地元の建築家を含むアレッポの復興計画を承認しました。2025年末現在、限られた安全地帯で学者がモザイクを再構築し、修復を計画することが許可されていますが、進行中の紛争により、大規模な再建は制限されています。アレッポは、紛争によってユネスコ世界遺産がほぼ消滅してしまう可能性があること、そして、たとえ断片であっても回復するには何年もの努力が必要であることを例証している。

オーストラリア、グレートバリアリーフ: 危険リストに関する議論でしばしば取り上げられるサンゴ礁は、温暖化した海水による壊滅的なサンゴの白化現象に直面している世界自然遺産です。ここ数十年にわたる大規模な白化現象により、広大なサンゴが死滅しました。ユネスコのリアクティブ・モニタリング報告書(2012~2021年)は繰り返し「深刻な懸念」を表明しましたが、オーストラリア政府が大規模な水質改善プログラムとサンゴ再生研究を約束したこともあって、サンゴ礁を絶滅危惧種に指定することは控えました。しかしながら、サンゴ礁の事例は示唆に富んでいます。オーストラリア政府はその後、モニタリングに投資を行い、民間のダイビング事業者はサンゴ礁の保護について訪問者に教育を行い、最近の法律では沿岸開発による新たな流出水が制限されています。2022年、ユネスコは、 34% 世界遺産の多くは既に気候変動の影響を受けていますが、リーフのような場所は特別なカテゴリーに属します。リーフの事例は、科学的なロビー活動(例えば海洋生物学者によるもの)がユネスコにどのような影響を与えることができるかを示しています。リーフは「監視リスト」に掲載され、オーストラリアに汚染と温室効果ガスの排出削減を迫っています。現在、旅行業者は気候変動対策を奨励しています。旅行者がカーボンオフセットやリーフ修復基金に資金を提供することで、状況は改善する可能性がありますが、根本的な脅威(地球温暖化)に対処するには、幅広い政策変更が必要です。

エバーグレーズ国立公園(米国): アメリカ最大の亜熱帯原生地域は、ハリケーン・アンドリューの襲来と数十年にわたる排水によって湿地の約50%しか無傷ではなくなった後、1993年に危険リストに加わった。主な脅威は水の転用と汚染だった。米国連邦政府と州政府機関は、35年間にわたる数十億ドル規模の、自然な水の流れを回復させる包括的エバーグレーズ修復計画(CERP)で対応した。2007年までに、ユネスコはエバーグレーズが十分に安定したと判断し、リストから削除した。主要な措置には、運河の塞栓、外来種の除去、農業用排水をろ過するための湿地の工学処理が含まれていた。ユネスコのニュースリリースでは、米国が公園の再生に投資した「科学的および財政的資源」を称賛した。今日の訪問者にとって、この成功は公園の動植物のほとんどが回復したことを意味します。ワシ、マナティ、ランが再びよく見られます。現在進行中の作業(藻類ブルームの監視、海面上昇への適応)は、復元が継続的に行われていることを示しています。エバーグレーズは、継続的な資金提供と政策転換(浄水法、土地利用の変更)により、深刻な被害を受けた世界遺産の自然環境であっても、危機を脱するのに十分な回復力を持つことを示しています。

ヴィルンガ国立公園とカフジビエガ国立公園 (DRC): 中央アフリカでは、紛争と無法状態が大型類人猿やゾウを危険にさらしています。ヴィルンガ国立公園(マウンテンゴリラの生息地であり、コンゴ地溝帯の一部)は、戦争と密猟により1994年に世界遺産に登録されました。ユネスコの1997年の決定では、紛争がヴィルンガとその周辺の公園で「難民の流入、森林破壊、密猟」を引き起こしたと明確に指摘されています。実際には、数十年にわたる民兵による暴力が続いています。ヴィルンガとカフジ・ビエガ(近隣のチンパンジー保護区)では、2000年代初頭までに野生生物が劇的に減少しました。国際NGO(WWF、 ヴィルンガ財団)が最終的に介入した。彼らの戦略は、武装したパークレンジャー(民兵を撃退するため)と、地域住民に観光と森林農業への参加を促すコミュニティプログラムを組み合わせたものである。ユネスコのSOC報告書は繰り返しこれらの努力を評価しており、2010年代までには密猟は減少し、少なくとも1種のゴリラの個体群は安定した。(しかし、コンゴ民主共和国の広範な不安定さが解決されていないため、両方のゴリラが危険リストに載ったままである。)これらの公園は、生物多様性と紛争を結びつけることの危険性を浮き彫りにしている。今日、ヴィルンガを安全に「訪れる」ためには、厳しく管理されたゴリラトレッキングに参加する必要がある。その料金は地元の開発プロジェクトを支援するものである。これらはまた、NGOが果たす重要な役割を示している。ヴィルンガチームは国際的な注目を集めている。メディアや著名人(映画や写真)を活用することで、ユネスコだけでは提供できない資金を動員したのである。

ルーマニア、ロジア・モンタナ鉱山風景: 文化遺産と産業の対立という特異な事例。ロシア・モンタナのローマ時代の金鉱山と中世の村落は、露天掘り再開の脅威のみを理由に、2021年に危険リストに登録された。ユネスコは、大規模な金採掘の再開は考古学的地層を破壊すると正当化した。この遺跡は広大な鉱山のギャラリーと歴史的な木造教会の建造物で有名である。論争の背景にあるのは、長年にわたり国際的な鉱山会社が数十億ドル規模のプロジェクトを推進し、歴史家や地元住民による抗議を引き起こしてきたことである。ユネスコの登録は採掘を法的に禁止するものではなかった(その後、会社は投資協定に基づきルーマニアを提訴した)が、世界的な圧力をかけるものであった。鉱山プロジェクトが中止された際、ユネスコは是正計画を策定した。現在、ルーマニア当局は遺産専門家と協力して遺跡の調査と保全に取り組んでいる。調査には、トンネルの詳細な3Dマッピングや、発掘調査前の古代の碑文のデジタル化などの手法が用いられている。ロシア・モンタナの事例は、遺産保護が経済的利益といかに衝突するかを如実に示しています。ここでの成功は、ユネスコの枠を超えた法的・外交的解決にかかっています。とはいえ、リストに掲載されただけでも、地元の活動家は国際的に発言力を強め、古い坑道の安定化のためのユネスコからの支援も提供されています。

ユネスコ、各国、NGOの活動:資金調達、緊急対応、成功事例

絶滅危惧種に指定されると、ユネスコと国際パートナーは状況の改善を目指します。主なメカニズムには、資金提供、技術支援、正式な計画などが含まれます。

まず、前述の通り、登録は緊急資金の拠出を可能にします。世界遺産基金(WHF)はユネスコの一般遺産基金です。遺産が危険リストに掲載されると、委員会は通常、直ちにWHFからの補助金を拠出します。例えば、2012年にトンブクトゥ(マリ)がリストに掲載された後、ユネスコはモスクの壁の崩壊を防ぐための緊急資金を拠出しました。WHF以外にも、 ヘリテージ緊急基金 (2015年設立)紛争地域や災害地域における危機的状況に特化した基金です。これらの寄付金は、遺物の空輸、緊急時の警備、あるいは専門の保存修復専門家の派遣に充てられます。近年の紛争(イラク、シリア、ウクライナ)において、ユネスコはこの基金を活用し、博物館・美術館のコレクションの安全確保と被害状況の衛星画像分析の提供に役立てています。

第二に、委員会は通常、締約国に対し、是正保全計画または緊急保全計画の策定を義務付けます。この計画は、運用ガイドラインに従って「フェーズII」と呼ばれることもあり、それぞれの脅威に対処するための測定可能な行動を詳細に規定する必要があります。この計画には、多くの場合、タイムラインのコミットメント、法改正、またはインフラプロジェクトが含まれます。例えば、オフリド湖(北マケドニア/アルバニア)が世界遺産に登録された後、2024年のユネスコの決定では、新たな下水処理施設とより厳格なゾーニング法の設置が強く求められました。ロシア・モンタナに関しては、ユネスコの2023年報告書には、考古学的遺跡の目録作成と新規採掘許可の停止に関する勧告が含まれています。

ユネスコはパートナーシップも活用しています。アフリカでは、アフリカ世界遺産基金やユネスコ現地事務所と連携し、公園管理官や弁護士に遺産法に関する研修を実施しています。アジアでは、 イコモス (文化諮問機関)と地元の大学が協力し、保全の選択肢(例:アフガニスタン、バーミヤンの倒壊した寺院の再建)を検討しています。また、パイロットプロジェクトへの資金提供も行っています。その一例が、ユネスコの支援を受けたマダガスカルのアツィナナナ森林に遠隔監視カメラを設置し、違法伐採への迅速な対応を可能にしたプログラムです。長年にわたるこうした活動の結果、マダガスカルの森林は劇的に改善し、同地域は世界遺産リストから除外されました。

重要なのは、危険リストからの除外は成功例とみなされることです。ユネスコはこれを誇りを持って強調しています。最近の例:

マダガスカル – アツィナナナ熱帯雨林は2025年に伐採されました。ユネスコは、以前伐採された地域の63%が新たな管理下で再生し、キツネザルの密猟は10年ぶりの低水準に達したと報告しました。
エジプト – アブ・メナ(初期キリスト教の巡礼地)は、地下水ポンプによって地下水位が下がり、構造物の崩壊が防がれたため、2025年に指定リストから削除されました。
リビア – ガダメス旧市街は、地元のパートナーによる建物とインフラの修復を経て、2025年にリストから削除されました。
コンゴ民主共和国 – 2023年の会期では、民兵が撤退し、公園管理が改善されたため、ガランバ、オカピ、その他のコンゴ民主共和国の遺跡がリストから削除されました。
アメリカ/ホンジュラス 前述のとおり、エバーグレーズとリオ・プラタノは、大規模な生態系の修復作業の後、2007 年にリストから削除されました。

これらの遺産の撤去には共通の特徴がある。資金(国家予算または国際助成金)、地域能力開発、法的執行、そして地域社会の関与といった組み合わせだ。重要なのは、ほとんどの遺産に強力な監視体制が組み込まれていることだ。委員会は解決策の有効性を定期的に検証することを強く求めた。2025年のアズレー氏の発言はそれを要約している。遺産を危険から脱却させることは「特別な努力」だが、ユネスコは 「アフリカで追求する…」 そして他の場所でも目に見える成果を上げています。

最後に、ユネスコの任務は危険リストに載っているもの以外にも及ぶ。 ない ユネスコは、その上で、事後監視と定期的な報告を通じて各国政府に圧力をかけています。例えば、ヴェネツィアとマチュピチュは絶滅危惧種として登録されていませんが、ユネスコは観光客数の制限を見直すための案件を立ち上げ、警告を発し、それを受けて各国の政策が調整されています。同様に、ジャーナリストや学者が新たな脅威、例えば暫定的な保護地域における違法伐採のニュースなどを発見した場合、ユネスコ世界遺産センターに通報することができます。ユネスコは国内法を強制執行することはできませんが、オフリド湖の2024年警告のように、当局に行動を起こさせるプレスリリースや懸念表明を発することは可能です。

遺産保護のための科学技術

現代の科学技術は、危機に瀕した遺跡にとって強力な味方です。その主な分野は以下の2つです。

  • リモートセンシングとモニタリング: Satellites now constantly scan heritage zones. Programs like [SatHerita ge] or Copernicus feed UNESCO with data: e.g. automatic deforestation alerts in Amazon or southern African parks. In war zones, satellite imagery can document destruction. For example, damage to Ukraine’s Heritage sites is being chronicled by high-resolution satellite shots (available to UNESCO and to the public through news outlets). UNESCO uses such data in its SOC reports when on-site access is impossible. A case in point: the decision on the Historic Centre of Odesa (Ukraine, 2023) cited satellite imagery showing shell craters and roof damage. Dams and quarries also leave tell-tale signatures visible from space, helping reviewers verify compliance.
  • 3Dスキャンとデジタルアーカイブ: レーザースキャン、写真測量、ドローンは記録に革命をもたらしました。戦争で破壊された遺跡は、たとえ瓦礫しか残っていなくても、デジタル技術で詳細に記録保存できます。ユネスコは、モスル旧市街のクレーターのLiDAR調査や、カンボジアの寺院とメキシコの植民地都市の3Dモデルの作成を支援しています。イタリアの ポンペイ 研究チームは地中レーダーを用いて、破壊される前に隠された墓を発見しました。アイデアはシンプルです。遺跡を物理的に保存できなくても、少なくともデータは保存できるのです。これはバーチャルツーリズムへの架け橋でもあります。例えば、大英博物館はバーミヤン大仏(2001年に破壊)のバーチャルツアーを実施しました。保存修復の面では、石材の固化にナノマテリアルを用いたり、水没遺跡の防波堤工事を行ったりといった技術が、ユネスコの支援を受けて試験的に導入されています。

その他の技術としては、ガランバ公園の絶滅危惧ゾウに搭載されたUNDRR認定のGPSトラッカー、夜間の違法伐採を検知する音響センサー、中世の城の洪水危険区域を予測するAIモデルなどがあります。これらの取り組みは、生態学、工学、コンピュータサイエンスを組み合わせた学際的な研究が、今や遺産保護活動に不可欠であることを示しています。ユネスコは、IUCNや国立遺産研究所などの科学機関と定期的に連携し、イノベーションを地域活動計画に反映させています。

法的枠組みと政治的複雑さ

世界遺産登録は、基本的に自発的な国際的メカニズムです。ユネスコは伐採業者を逮捕したり、計画者を訴追したりすることはできません。条約上の義務と周囲の圧力によって運営されています。それぞれの遺産の運命は、それぞれの国の法律と政治に左右されます。

国際的には、1972年の条約は裁判所ではないため、ユネスコは勧告を行うことしかできません。しかし、遺産が危険リストに掲載されると、各国政府は外交的圧力に直面することが多くなります。毎年ユネスコに報告し、世界遺産委員会に報告しなければなりません。保護を怠ると、国の地位に影響が及ぶ可能性があり、世界遺産基金へのアクセスや親善関係を失う可能性があります。実際には、各国の遺産省や文化省が、ユネスコのガイドラインを国内法を通じて実施しています。例えば、危険リストに掲載されているアフリカの多くの公園は、国の自然保護法によっても保護されており、世界銀行やNGOなどの機関から資金援助を受けています。ユネスコの役割は、調整とアドボカシーです。

領土紛争が事態をさらに複雑化させている。一部の遺産は係争地域にある。例えば、ベツレヘムの聖誕教会は、ロシアをはじめとする数カ国が承認しているものの、イスラエルと連携する国は承認していない「パレスチナ国」としてユネスコに登録された。ユネスコは伝統的にどちらか一方に肩入れしないのが通例だが、国連決議では、申請国の選択に従って登録するよう義務付けられている。最近、ロシアの占領下にもかかわらず、ウクライナの名でウクライナの遺産が登録されたのは、締約国が遺産を登録するという条約の規定に従ったものだ。逆に、イスラエルはパレスチナの提案(ユネスコの管轄外の政治的紛争)によりエルサレムが登録された際にユネスコとの協力を停止した。

重要なポイントは、成功にはしばしば法改正が必要だということです。危険リストに掲載された多くの決定は、政府に対し、より厳格な遺産法の制定や環境規制の施行を促すことで終わります。ユネスコ委員会の決定(上記で引用)には、「締約国は…すべきである」といった文言が頻繁に含まれています。これらは道徳的な重みを持つものの、執行の保証はありません。NGOや市民社会が不足を補うこともあります。例えばハンガリーでは、地元の活動家がホルトバージ国立公園(水路転用の脅威にさらされている世界遺産)を保護するために、EUとユネスコの両方の義務を理由に訴訟を起こしました。

倫理的な旅:絶滅の危機に瀕した場所を責任を持って訪れる

Travelers can be allies of endangered heritage – but only if careful. Here are some guidelines: – 今後の研究: Check the current status of a site on UNESCO’s website or credible news. Some Danger List sites are active conflict zones or have travel advisories (e.g. Syria, Libya, parts of DRC). Safety first: if a country warns against travel, don’t go. – 公式ガイドを使用する: When visiting a listed site, always go with certified local guides and licensed tour operators. This ensures your fees (and any donations) flow to preservation trusts or community funds. Ask if part of your ticket supports site maintenance or local communities. – 影響を最小限に抑える: Follow “leave no trace” principles. Stay on marked trails, don’t remove any artifacts or natural items, and avoid touching fragile walls or corals. If drone-flying or photography is regulated at a site, follow rules strictly. Overcrowding is often the problem, so travel off-season when possible. – 地域経済を支援する: Buying handicrafts or services from locals linked to a heritage site can provide jobs that discourage looting or illegal cutting of trees. For example, communities around Virunga now operate gorilla lodges and crafts markets that directly finance park protection. – ストーリーを共有する: 倫理的な旅行者は、ソーシャルメディアで洞察を共有することがよくあります。責任ある行動(例えば、ユネスコ生物圏保護区でプラスチックを避けるなど)について投稿することで、他の人を励ますことができます。さらに、ストーリーテリングは意識向上につながります。修復された寺院や公園の清掃活動に関するフォトエッセイは、これらの場所が重要であることを世界に伝えるのに役立ちます。

つまり、危機に瀕した世界遺産への旅は、敬意と社会貢献の精神を持って行われる限り、人生を変えるほどの学びをもたらすものになり得るのです。戦争で荒廃した遺跡に「こっそり」入ろうとする者は絶対に許されません。また、イエメンやマリの一部など、訪れること自体が不可能な場所もあります。しかし、学びたいと願う訪問者を歓迎する場所も多くあります。例えば、エバーグレーズの修復プロジェクトやオフリド湖の河川清掃活動のガイド付きツアーに参加できます。責任ある観光客として、遺跡のニーズを調査し、良心的な運営業者を選び、場合によっては現地の環境保護慈善団体に寄付することで、遺産保護を旅行体験の一部にすることができます。

よくある質問

ユネスコの危機に瀕した世界遺産リストとは何ですか? これは、ユネスコによって顕著な普遍的価値が深刻な脅威にさらされていると指定された世界遺産の一部です。その目的は、 「国際社会を動員する」 これらのサイトを支援するためです。

現在、危険リストに載っているサイトはいくつありますか (また、情報源によって異なるのはなぜですか)? 2025年末現在、ユネスコは53の危機遺産をリストアップしています。他の情報源によると、ごく最近3つの遺産がリストから除外されたため、56とされている場合もあります。これは、リストが時間の経過とともに変化することを示唆しています。

ユネスコはどのようにして危険リストに遺跡を追加することを決定するのでしょうか? 世界遺産委員会は、各国、専門家、報告書などから提出された証拠を審査し、条約の基準(差し迫った、または潜在的な深刻な脅威)に照らして審査します。委員会が脅威が正当であると判断した場合、当該遺産を危機遺産として登録することを決議し、通常は当該国に是正措置計画の提出を求めます。

サイトを危険にさらす主な脅威は何ですか? 武力紛争や戦争による被害、気候変動(洪水、干ばつ、サンゴの白化)、オーバーツーリズム、都市開発、鉱業やインフラ整備プロジェクト、汚染、密猟、外来種、放置などが含まれます。多くの地域は、これらの要因が複合的に絡み合っています。

現在、どの世界遺産が危機に瀕していますか? 公式リスト(53件)はユネスコのウェブサイトでご覧いただけます。例えば、シリアのアレッポとパルミラ、イエメンのサヌア旧市街、コンゴ民主共和国のヴィルンガ公園とガランバ公園、アフガニスタンのバーミヤン渓谷、そしてロシア・モンタナ(ルーマニア)のような文化的景観などが含まれています。(地域別の概要は上記をご覧ください。)

危険リストからサイトを削除することはできますか? 方法は? はい。ユネスコは、遺産の価値が回復された、あるいは脅威が軽減されたと判断した場合、登録抹消を決議することができます。例えば、マダガスカル、エジプト、リビアの遺産は、2025年に登録抹消されましたが、これは修復事業の完了後に行われました。登録委員会は、それぞれの登録抹消について正式な計画を策定し、多くの場合、登録抹消後のモニタリングを義務付けています。

最近、危険リストに追加されたサイトや、危険リストから削除されたサイトはどれですか? 最近追加されたもの:2023年には、ウクライナの遺跡(キエフの聖ソフィア大聖堂、リヴィウ、オデッサ)が戦争被害のため登録されました。削除されたもの:2025年には、マダガスカルの熱帯雨林、エジプトのアブ・メナ、リビアのガダメスが修復作業の結果、登録リストから削除されました。(ここ数年、アフリカのいくつかの公園も登録が削除されています。)

ヴェネツィア、グレートバリアリーフ、マチュピチュは話題になっているのに、危険リストに載っていないのはなぜですか? これらの世界的に有名な遺産は脅威に直面していますが、ユネスコは(これまでのところ)約束された対策、あるいは既存の保護措置によって対処できていると判断しています。例えば、オーストラリアが改革を約束したことを受け、ユネスコはグレート・バリア・リーフの登録を延期しました。ヴェネツィアでは、観光管理が議論されていますが、遺跡は引き続き主要リストに掲載され、定期的な報告を通じて監視されています。つまり、理論上危険にさらされているだけでは、自動的に危険リストに掲載されるわけではなく、ユネスコは価値の喪失または保護措置の不履行の明確な証拠を求めています。

各国政府やNGOと比較して、ユネスコの役割は何ですか? 各国政府は、国内法に基づき、自国の遺産を保護する最終的な責任を負います。ユネスコは、枠組み、専門知識、資金調達メカニズム(世界遺産基金、緊急基金など)を提供します。NGOとIUCN/ICOMOSは、調査研究、保全技術、現地でのプロジェクト管理などを提供することがよくあります。理想的には、これら3つが協力し、政府が計画を実施し、ユネスコが助言と援助の仲介を行い、NGOが科学と地域社会の関与を促進するのが理想的です。

紛争(戦争)は遺産にどのような損害を与えるのでしょうか?そして紛争後にはどうなるのでしょうか? 武力紛争は、建物への砲撃、放火といった直接的な破壊と、間接的な被害(遺物の略奪、維持管理の喪失)を引き起こす可能性があります。紛争が終結した後、ユネスコはシリアで行ったように、被害状況の調査と再建計画の支援のために調査団を派遣することができます。シリアやウクライナのように、紛争中および紛争後には、安定化のための資金を調達するために、遺跡が危険リストに掲載されることもあります。治安が許せば、復興は国際的な支援を受けて進められます。(最近の例としては、戦争で被害を受けたウクライナのキエフにある国立図書館の再建をユネスコが計画していることが挙げられます。)

気候変動は世界遺産にどのような脅威を与えるのでしょうか? 海面上昇(沿岸遺跡の浸水)、より激しい嵐(ハリケーンによる古代教会の屋根の破壊)、気温変化(サンゴ礁の白化)、降雨量の変化(森林の干ばつ)など。ユネスコの2022年報告書は、気候変動の影響を強調した。 「すでに全サイトの34%に悪影響を及ぼしている」予測によると、環礁や氷河のリスクは高まっています。ヴェネツィアのような遺跡は海面上昇に、ガラパゴス諸島は海水温の上昇に直面しています。ユネスコの委員会は、危険にさらされている遺跡に対し、気候変動への耐性強化計画の策定をますます強く求めています。

オーバーツーリズムは世界遺産にどのような影響を与えますか? 過剰な訪問者は、脆弱な構造物を侵食し、汚染を増加させ、地域経済を歪める可能性があります。その結果、歩行路が狭くなったり、入場制限が設けられたりすることがあります(メキシコのチチェン・イッツァでは時間制限付きの入場券が設けられるなど)。ユネスコは観光を直接監視しているわけではありませんが、各国に対し、訪問者が遺産に与える影響を管理することを義務付けています。旅行者には倫理的な義務があります。「マスツーリズム」の罠に陥らず、規則を尊重すべきです(例えば、脆弱な遺跡を踏んではいけないなど)。責任ある観光は維持管理のための収入源にもなりますが、慎重に管理する必要があります。

都市開発と不動産は敷地をどのように脅かすのでしょうか? 不動産ブームは遺産緩衝地帯を侵食する可能性があります。高層ビル開発(ウィーン、京都など)は歴史的な景観を損なう可能性があります。自然遺産であっても、近隣の建設によって水や野生生物が流される可能性があります。ユネスコは遺産地域付近の大規模プロジェクトの審査に努めており、各国はOUVに影響を与える可能性のある開発について委員会に通知することになっています。地域住民の活動も重要です。いくつかの国では、地域社会が保護地域における有害な開発を差し止めるよう裁判所に申し立て、成功しています。

世界遺産としての地位を完全に失うことはあるのでしょうか? はい。ある遺産のOUVが回復不能なほど失われた場合、委員会は危険遺産リストと世界遺産リストの両方から当該遺産を抹消することができます。これは、2009年に過剰なダム建設を受けたドレスデンのエルベ渓谷(ドイツ)と、2007年にオマーンのアラビアオリックス保護区で実際に起こりました。リストからの抹消はまれであり、最後の手段とみなされています。通常、危険遺産リストは、恒久的な損失を防ぐための早期警告として意図されています。

旅行者は危機に瀕している世界遺産を倫理的に訪問するにはどうすればよいでしょうか(すべきこと、すべきでないこと)? 事前にしっかり調べて、遺跡のルールや保全に関する事項を理解しましょう。現地ガイドを雇い、設置されている標識(例えば、建造物に登ったり触れたりしてはいけないなど)をすべて守りましょう。植生や遺物を踏み荒らさないよう、公式の道を必ず歩きましょう。ゴミは持ち帰り、輸入ツアーではなく地元経済を支援しましょう(地元の食材を食べ、地元の職人を利用しましょう)。略奪された遺物や象牙は買わないでください。紛争地域では、公式の勧告に従ってください。許可なく訪れることは、多くの場合違法であったり、命に関わる危険があります。ソーシャルメディアでは、自撮り写真ではなく、意識啓発活動を共有し、保全の必要性を訴えましょう。つまり、ユネスコ世界遺産を自分の遺産のように、敬意を持って、環境への負担を軽くしましょう。

保全活動に寄付したり支援したりするにはどうすればよいでしょうか? ユネスコ世界遺産ウェブサイトには、世界遺産基金への寄付や緊急資金の嘆願書への署名など​​、様々な貢献方法が掲載されています。多くの遺産NGOは、特定の遺産プロジェクトへの寄付を税控除の対象としています。例えば、「Save Virunga(ヴィルンガを救え)」キャンペーンは公園管理職員のための資金を調達し、世界遺産基金は様々な世界遺産の修復を支援しています。ユネスコは、各締約国のユネスコ委員会と遺産管理当局の連絡先情報を管理しています。直接連絡を取り、支援方法を尋ねることが効果的です。出所が疑わしい未検証の「Save the (X)((X)を救え)」キャンペーンではなく、実績のある自然保護慈善団体(IUCN、世界遺産基金、地域団体など)への寄付を推奨します。

損傷した文化遺産を保存するにはどのような修復方法が使用されていますか? ケースによって異なります。一般的な方法としては 安定 (例えば崩れかけた壁を支えるなど) 再建 (元の材料を使用して破壊されたアーチを再建するが、文書化が許可されている場合のみ)、および デジタルアーカイブ (実物が消えても正確なモデルが残るように3Dスキャンする)。保存チームはまた、 環境修復自然遺産の場合、これは在来種の再導入や汚染物質の除去を意味するかもしれません。都市遺産の場合、排水設備の設置や外来植物の駆除を意味するかもしれません。極端なケースでは、遺産の断片が博物館に移送され(例えば、繊細なフレスコ画は切り離されて保管されることもあります)、完全な損失を防ぐこともあります。保存は、ハイテク工学と古くからの職人技(例えば、伝統的な木組みを用いて中世の木造屋根を再建するなど)の組み合わせに頼ることがよくあります。

世界遺産にはどのような法的保護がありますか? 世界遺産条約自体は拘束力を持たないものの、ほとんどの国が批准し、国内法に組み入れています。例えば、各国は世界遺産を承認なく改変することを違法とする遺産保護法を制定することがよくあります。国際的には、世界遺産の指定は外交圧力をもたらす可能性があります。条約を締結している国は、遺産の保全状況を報告する義務があります。また、一部の世界遺産は他の条約(湿地条約、野生生物に関するワシントン条約など)によって保護されています。紛争地域(クリミアの文化遺産、ガザのモザイクなど)では、ユネスコは中立性を維持し、遺産の保護を継続することを目指しています。 それ自体政治的な論争にもかかわらず。

ユネスコはどのようにして遺跡を監視するのでしょうか? 「保全状況」(SOC)プロセスと事後モニタリングを通じて、締約国は数年ごとに特定の遺産に関するSOC報告書の提出を求められ、必要に応じて諮問ミッションが派遣されることがあります。ユネスコはすべてのSOC報告書をウェブサイトで公開しています。報告書の提出は、締約国自身、またはユネスコ現地事務所やNGOがユネスコに問題を警告することで開始されます。危険リストに掲載された遺産は、毎回の委員会会合でモニタリングされます。さらに、ユネスコは毎年、カテゴリー別(紛争、気候など)に危機に瀕している遺産の概要を発表しています。

最も危機に瀕している自然遺産と文化遺産は何ですか(例) 自然: ヴィルンガ(コンゴ民主共和国) – 武装集団と石油の脅威にさらされている世界最古の国立公園。 エバーグレーズ(アメリカ) – 排水により回復しつつある広大な湿地帯 スマトラ島の熱帯雨林遺産(インドネシア) – 伐採と火災の危険がある地域。文化遺産: エルサレム旧市街 (パレスチナ国) – 無規制の建築によるリスク ウィーン歴史地区 – 近代的な高層ビルによるリスク バーミヤン渓谷 (アフガニスタン) – 破壊された仏像の跡地。現在は情勢不安により危険にさらされている。 チャンチャン (ペルー) – 地震と浸食の脅威にさらされている脆弱な日干しレンガの都市。

サードパーティのリスト/旅行リストはユネスコのリストと比べてどの程度信頼できるのでしょうか? サードパーティの旅行記事(AFARやAtlas & Bootsなど)は、通常は善意に基づいて書かれていますが、情報が古かったり、情報が偏っていたりすることがあります。例えば、一部のリスト記事には、ヴェネツィアやグレートバリアリーフが誤って記載されています。これらは認識の助けにはなりますが、決定的な情報源と見なすべきではありません。ユネスコの公式リストが唯一の信頼できる情報源です。Wikipediaのリストは、ユネスコやニュースを引用しているため、簡単な参考資料として役立つことが多いですが、公式の変更に遅れている可能性があります。リスト記事は必ずユネスコのウェブサイトで確認してください。

鉱業、ダム、採掘産業は遺跡にどのような脅威を与えるのでしょうか? 生息地を破壊したり、景観を飲み込んだりする可能性があります。ロシア・モンタナについては上で触れました。同様に、ガーナのキンタンポ滝地域はかつてコンクリートダム建設計画の脅威にさらされていました(最終的には遺産保護のため延期されました)。中央アジアでは、河川の迂回計画により、古代のオアシスやシルクロードの集落が危険にさらされています。ユネスコは通常、世界遺産付近でのこのようなプロジェクトには環境影響評価(EIA)を義務付けています。評価で被害が認められた場合、世界遺産委員会は警告としてその地域を絶滅危惧種に指定することができます。

危険リストに載せられると、経済にどのような影響がありますか? 結果は様々です。「絶滅危惧」指定に関する否定的な報道は、少なくとも一時的には観光を阻害する可能性があります。例えば、戦争で荒廃した遺跡を訪れる観光客が減るかもしれません。政府は、登録による経済的影響を懸念することもあります。一方で、登録によって観光管理のための追加資金が確保されることもあります。地域主導の遺跡には、本来であれば得られなかった支援や助成金が流入する可能性があります。全体として、指定は烙印を伴うこともありますが、ユネスコは、これは非難ではなく支援の機会であると強調しています。多くの場合、復興プロジェクトによって遺跡が改善すると、環境に配慮した観光が実際に増加します。

成功事例、つまり回復したサイトとはどのようなものですか? すでに述べたもの(ガラパゴス、エバーグレーズ、アツィナナナ、リオプラタノ)のほかにも、次のような成功例がある。 プラタノ川 (ホンジュラス、2007年にリストから削除)および オカピ野生動物保護区 (コンゴ民主共和国ではゲリラ活動が沈静化し、2023年頃にリストから外された)。スペインの都市 カディス (歴史地区)は、古い家屋の修復後、2019年に危険区域から解除されました。成功事例から学ぶべき教訓:強力な地方自治(新たな遺産法など)、保護への大規模な投資、そして修復の持続性を確保するための国際的な監視。

地域社会に力を与えるにはどうすればよいでしょうか? 多くの場合、最も効果的な保全活動には地域住民の参加が不可欠です。ユネスコは、地域社会による管理をますます重視しています。例えば、タンザニアではユネスコの資金提供を受けたプロジェクトにより、マサイ族のスカウトが訓練を受け、聖地オルドニョ・レサティマを茂みの侵入から守っています。ペルーでは、先住民のシャーマンがチャビン・デ・ワンタル遺跡で観光事業を運営し、その運命を担っています。事例研究では、住民が(雇用や助成金を通じて)遺産から利益を得ると、遺産を守る傾向があることが示されています。ユネスコは、学校を遺産教育に巻き込み、文化を地域社会の誇りとするプログラムを実施しています。

絶滅の危機に瀕したサイトの集中を最もよく示すデータと視覚化は何ですか? 上の地図はその一例です。ユネスコはウェブサイト上でインタラクティブなチャートも提供しています(脅威の種類別、登録年別など)。研究者たちは、UNESCO APIを使用して、時系列の傾向や脆弱性指標を示すダッシュボードを作成しています。一般的に、地図(国別)と棒グラフ(脅威カテゴリー別)を組み合わせると、最も分かりやすくなります。例として、ユネスコの世界規模の分析と水リスク73%の統計を参照しました。

ユネスコは「顕著な普遍的価値」(OUV)をどのように定義していますか? OUV(普遍的価値)はユネスコの中核概念であり、ある遺産が国境を越え、現在および将来の世代にとって共通の重要性を持つほどに例外的な重要性を持つことを意味します。1972年条約の運用ガイドラインは、OUVの10の基準(文化遺産i~vi、自然遺産vii~x)を示しています。少なくとも1つを満たしている遺産は世界遺産となります。重要なのは、OUVであるためには、遺産が「完全性および/または真正性の条件を満たし、適切な保護および管理システムを備えている」必要があるということです。(したがって、脅威によって完全性が損なわれると、OUV自体が危険にさらされます。)

ジャーナリストはどのようにしてユネスコのデータを要求したり、脅威を報告したりできるのでしょうか? すべての世界遺産データ(登録、委員会の決定、SOC報告書)はwhc.unesco.orgで公開されています。ジャーナリストはSOC報告書(PDF)と過去の委員会の決定をダウンロードできます。新たな脅威を報告するために、ユネスコは各遺産のページまたはSOCフォームにメールアドレスの連絡先を提供しています。ジャーナリストは通常​​、ユネスコ危険リスト自体を情報源として挙げて記事を投稿します。(例えば、ロイターのオフリド湖に関する記事は、ユネスコの2024年報告書を引用しています。)未公開データのリクエストについては、情報公開法に基づく問い合わせで、ユネスコ世界遺産センターの広報室またはパリ事務局にお問い合わせください。

危険リストの歴史は何ですか? この一覧表は1978年(条約発効から9年後)に作成され、最初の登録資産はアルジェのカスバでした。当初は火山被害や戦争など、記載件数は少なかったものの、時とともに拡大し、政治的すぎるという批判に直面しました。2016年の第40回委員会で「新たなビジョン」イニシアチブが提唱され、新たな視点で見直しが行われ、今日では肯定的な成果に重点が置かれるようになりました。数十年にわたり、合計約55件の資産が一覧表に掲載されてきました(ガラパゴス諸島など、登録と登録解除を繰り返しているものもいくつかあります)。注目すべき進化は、気候への関心の高まりです。委員会が自然遺産に関するSOC(自然遺産委員会)の決定において、気候変動を体系的に考慮し始めたのは、2010年代に入ってからです。

政府は、遺跡を危険にさらさないように、どのようにすればより良い推薦書類を準備できるでしょうか? 世界遺産リストに登録される前に、ユネスコ諮問機関(IUCN/ICOMOS)が推薦内容を精査します。提案内容に既知の脅威(計画中の高速道路など)が示され、それらへの対処が不十分な場合、委員会は登録を延期することができます。各国政府は、徹底した影響評価を実施し、事前に管理計画を策定することで、こうした事態を回避できます。既に登録されている遺産については、緩衝地帯、現地の法的保護、持続可能な観光管理といった堅牢な管理が鍵となります。ユネスコはベストプラクティスに関するガイドラインを公開しており、多くの国が世界遺産コーディネーターを雇用して、OUV(普遍的・文化的価値)を国家計画に組み込んでいます。つまり、先見性と計画性があれば、遺産をそもそも危険レーダーから外すことができるのです。

用語集

  • 顕著な普遍的価値(OUV): 世界遺産を人類全体にとって重要なものにする要素。それは、比類のない、そしてかけがえのないものでなければなりません。
  • 保全状況(SOC)レポート: 各締約国が、自国の世界遺産、特に危機に瀕している世界遺産の状況について、通常は毎年または2年ごとにユネスコに提出する報告書。
  • リアクティブモニタリング: ユネスコがSOC報告書とミッションの調査結果に基づき、脅威にさらされている遺産を審査するプロセス。これは「脅威にさらされている特定の遺産の保全状況を報告する」ものです。
  • 危機に瀕している世界遺産のリスト: ユネスコの公式危機遺産リスト。このリストへの登録は、国際的な支援と資金を集めることを目的としています。
  • 緩衝地帯: 世界遺産の周囲にある保護区域。開発を制限することで、中心となる資産の保全に努めています。
  • 緊急援助: 危険リストに登録されたばかりの遺跡に対するユネスコ世界遺産基金からの助成金。
  • 締約国: 世界遺産条約を批准した国。遺産の推薦と保全の責任は締約国にあります。
  • ICOMOS / IUCN: 国際記念物遺跡会議(文化)と国際自然保護連合(自然) – 推薦と SOC レポートを評価する諮問機関。
  • 世界遺産条約(1972年): 世界遺産リストと危険リストを作成し、各国に遺産の保護を義務付けた国際条約。
  • 絶滅危惧地域: 危険リストに掲載されているサイトを指す非公式な用語。
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